【基礎から始める線形代数】行列の演算【大学講義】

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exam基礎から始める線形代数
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はじめに

「基礎から始める線形代数」では大学の講義を全く受けていなくても線形代数を理解できるようになることを目的に連載しています。

基本的には順を追って読み進めてもらえたら嬉しいのですが、飛ばして読んでいる方もいると思います。

わからない用語や知識が出てきた場合には過去の記事に書いてあるので、こちらから探してみてください。

行列のスカラー積

行列が複数の成分を持つのに対して、スカラーは一つの数値のことを示します。

スカラー積は行列の各成分をスカラーで乗算することで定義されます。

行列\(A\)とスカラー\(s\)についてのスカラー積は\(sA\)と表すことができます。

つまり、行列\(A\)を

\[A=\begin{bmatrix}a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n} \\ a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1}&a_{m2}&\cdots&a_{mn}\end{bmatrix}\]

とすると、スカラー\(s\)とのスカラー積\(sA\)は次のようになります。

\[sA=\begin{bmatrix}sa_{11}&sa_{12}&\cdots&sa_{1n} \\ sa_{21}&sa_{22}&\cdots&sa_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ sa_{m1}&sa_{m2}&\cdots&sa_{mn}\end{bmatrix}\]

乗算と同様にスカラーによる除算も可能です(\(\frac{ 1 }{s}\)を掛ければ良い)。

具体的な例として行列\(A\)とスカラー\(s\)を

\[A=\begin{bmatrix}3&0 \\ 0&-2 \\ 5&7\end{bmatrix},s = 2\]

とすると、スカラー積\(sA\)は次のようになります。

\[sA=\begin{bmatrix}3\times2&0\times2 \\ 0\times2&-2\times2 \\ 5\times2&7\times2\end{bmatrix}= \begin{bmatrix}6&0 \\ 0&-4 \\ 10&14\end{bmatrix}\]

スカラー積の性質

スカラー積は行列\(A,B\)及びスカラー\(a,b\)について次の性質を持ちます。

\[0A=O,1A=A\]

\[(ab)A = a(bA), (aA)B = a(AB)\]

一度、自分で確認してみると理解度が深まると思います。

行列の和

行列の和は「それぞれの行列の型」が等しい場合にのみ、各成分の加算によって定義されます。

一般的に示すと次のようになります。

\(m\times n\)行列の行列\(A\)と行列\(B\)を

\[A = \begin{bmatrix}a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n} \\ a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1}&a_{m2}&\cdots&a_{mn}\end{bmatrix},B = \begin{bmatrix}b_{11}&b_{12}&\cdots&b_{1n} \\ b_{21}&b_{22}&\cdots&b_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ b_{m1}&b_{m2}&\cdots&b_{mn}\end{bmatrix}\]

とすると、和\(A+B\)は次のようになります。

\[A+B = \begin{bmatrix}a_{11}+b_{11}&a_{12}+b_{21}&\cdots&a_{1n}+b_{1n} \\ a_{21}+b_{21}&a_{22}+b_{22}&\cdots&a_{2n}+b_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1}+b_{m1}&a_{m2}+b_{m2}&\cdots&a_{mn}+b_{mn}\end{bmatrix}\]

ここで、差については先ほどのスカラー積を用いて\(-1\)をBに掛けることで\(A+(-1)B = A+(-B) = A-B\)であることから、二つの行列の各成分について減算を行えば良いことがわかります。

具体的な例として行列\(A\)と行列\(B\)を

\[A = \begin{bmatrix}3&0 \\ 0&-2 \\ 5&7\end{bmatrix},B = \begin{bmatrix}4&1 \\ -6&9 \\ 8&0\end{bmatrix}\]

とすると、和\(A+B\)は次のようになります。

\[A+B = \begin{bmatrix}3+4&0+1 \\ 0+(-6)&-2+9 \\ 5+8&7+0\end{bmatrix} = \begin{bmatrix}7&1 \\ -6&7 \\ 13&7\end{bmatrix}\]

行列の和の性質

行列の和は行列\(A,B\)について次の性質を持ちます。

\[A+B=B+A, A+O=A\]

\[(A+B)+C=A+(B+C)\]

一度、自分で確認してみると理解度が深まると思います。

行列の積

行列の積は「掛けられる行列の列の数」と「掛ける行列の行の数」が等しい場合にのみ次のように定義されます。

\(m\times n\)行列\(A\)と\(n\times r\)行列\(B\)について次のように、各成分を\(a_{ij},b_{jk}\)\((0\leq i\leq m,0\leq j\leq n,0\leq k\leq r)\)とすると

\[A=\begin{bmatrix}a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n} \\ a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1}&a_{m2}&\cdots&a_{mn}\end{bmatrix},B = \begin{bmatrix}b_{11}&b_{12}&\cdots&b_{1r} \\ b_{21}&b_{22}&\cdots&b_{2r} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ b_{n1}&b_{n2}&\cdots&b_{nr}\end{bmatrix}\]

行列の積\(AB\)は次のような\(m\times r\)行列となります。

\[AB=\begin{bmatrix}ab_{11}&ab_{12}&\cdots&ab_{1r} \\ ab_{21}&ab_{22}&\cdots&ab_{2r} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ ab_{m1}&ab_{m2}&\cdots&ab_{mr}\end{bmatrix}\]

このとき\(AB\)の各成分\(ab_{ik}\)は次のように\(A\)の第i行に並ぶ成分と\(B\)の第k行に並ぶ成分を掛け合わせた和になります。

\[ab_{ik}=\displaystyle \sum_{i=1}^{n} a_{in}b_{nk} = a_{i1}b_{1k}+a_{i2}b_{2k}+\cdots+a_{in}b_{nk}\]

注意:行列\(A,B\)において行列の積\(AB\)が定義されても掛ける順序のことなる行列の積\(BA\)が定義されるとは限りません。

具体的な例として行列\(A\)と行列\(B\)を

\[A=\begin{bmatrix}0&5 \\ 1&-3 \\ 2&4\end{bmatrix},B=\begin{bmatrix}4&-2&3 \\ 1&5&0\end{bmatrix}\]

とすると、行列の積\(AB\)は次のようになります。

\[AB=\begin{bmatrix}0\times4+5\times1&0\times(-2)+5\times5&0\times3+5\times0 \\ 1\times4+(-3)\times1&1\times(-2)+(-3)\times5&1\times3+(-3)\times0 \\ 2\times4+4\times1&2\times(-2)+4\times5&2\times3+4\times0\end{bmatrix}\]

\[=\begin{bmatrix}5&25&0\\1&-17&3\\12&16&6\end{bmatrix}\]

行列の積の性質

行列の積は行列\(A,B\)について次の性質を持ちます。

\[AE=EA=A,AO=OA=O\]

\[(AB)C=A(BC)\]

一度、自分で確認してみると理解度が深まると思います。

行列の分配律

行列にはそれぞれで挙げた性質以外にも、次のような分配律の性質を持ちます。

\[a(A+B)=aA+aB,(a+b)A=aA+bA\]

\[A(B+C)=AB+AC,(A+B)C=AC+BC\]

確認問題

次の行列\(A,B,C,D\)について答えよ。

\[A=\begin{bmatrix}-3&2 \\ 5&1 \\ -1&4\end{bmatrix},B=\begin{bmatrix}1&4&-1 \\ 3&2&5\end{bmatrix},C=\begin{bmatrix}5&0&2 \\ 1&-3&0 \\ -2&2&4\end{bmatrix},D=\begin{bmatrix}4&2&3 \\ 1&3&5\end{bmatrix}\]

問一:行列の和が定義される組み合わせを全て求め、その和を計算せよ。

問二:行列の積が定義される組み合わせを全て求め、その積を計算せよ。

問一解答:行列の和が定義されるのはそれぞれの行列の型が等しい時であるから\(B+D\)のみである。よって

\[B+D = \begin{bmatrix}1+4&4+2&(-1)+3 \\ 3+1&2+3&5+5\end{bmatrix} = \begin{bmatrix}5&6&2 \\ 4&5&10\end{bmatrix}\]

問二解答:行列の積が定義されるのは「掛けられる行列の列の数」と「掛ける行列の行の数」が等しい時であるから\(AB,AD,BC,DC\)の4つaである。よって

\[AB=\begin{bmatrix}(-3)\times1+2\times3&(-3)\times4+2\times2&(-3)\times(-1)+2\times5 \\ 5\times1+1\times3&5\times4+1\times2&5\times(-1)+1\times5 \\ (-1)\times1+4\times3&(-1)\times4+4\times2&(-1)\times(-1)+4\times5\end{bmatrix}\]

\[=\begin{bmatrix}3&-9&13 \\ 8&22&0 \\ 11&4&21\end{bmatrix}\]

\[AD=\begin{bmatrix}(-3)\times4+2\times1&(-3)\times2+2\times3&(-3)\times3+2\times5 \\ 5\times4+1\times1&5\times2+1\times3&5\times3+1\times5 \\ (-1)\times4+4\times1&(-1)\times2+4\times3&(-1)\times3+4\times5\end{bmatrix}\]

\[=\begin{bmatrix}-12&0&1 \\ 21&13&20 \\ 0&10&17\end{bmatrix}\]

\[BC=\begin{bmatrix}1\times5+4\times1+(-1)\times(-2)&1\times0+4\times(-3)+(-1)\times2&1\times2+4\times0+(-1)\times4 \\ 3\times5+2\times1+5\times(-2)&3\times0+2\times(-3)+5\times2&3\times2+2\times0+5\times4\end{bmatrix}\]

\[=\begin{bmatrix}11&-14&-2 \\ 7&4&26\end{bmatrix}\]

\[DC=\begin{bmatrix}4\times5+2\times1+3\times(-2)&4\times0+2\times(-3)+3\times2&4\times2+2\times0+3\times4 \\ 1\times5+3\times1+5\times(-2)&1\times0+3\times(-3)+5\times2&1\times2+3\times0+5\times4\end{bmatrix}\]

\[=\begin{bmatrix}16&0&20 \\ -2&1&22\end{bmatrix}\]

最後に

行列の演算ではその演算が定義されるかどうかに気をつけてください。

最初に行列の型を全て書き出してしまうのも良いと思います。

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